生きたくもなし、死にたくもなし・・・。 「もうどうなってもいい」と思ってしまう時期がある。 「このまま死んでしまってもいいかもしれない・・・」終電も終わった駅前でそう思ったとき、目の前に現れる赤ワイン色のホンダオデッセイ。 近づくと「早く乗ってよ!」と助手席の少年に声をかけられる。 妙に懐かしい気分になって中へ乗り込むと、車は音もなく夜のとばりの中へとすべり出す。 こうして妻の浮気、子供の家庭内暴力と、とっくに崩壊してしまった家の主であるこの物語の主人公は、闇夜を疾駆するワゴン車の中の一員となる。 運転しているのは少年の父親らしい。 乗ってすぐに、この二人がニュースで見た親子だと気づく。 二人は交通事故で亡くなっていたはず・・・。 運転手は「あなたにとって重要な場所へ連れて行く」と言う。 そして、連れて行かれたところは喧騒の街の中、初めて妻の浮気を目撃した場所だった。 人の一生には「あの時こうしていれば・・・」という人生の分岐点とも呼べる一瞬が何回かある。 そんなところへ戻れて、もう一度やり直すことが出来たら・・・。 まさにそんな場面へと戻された主人公は、「赤の他人、他人の空似だ」として自分を誤魔化し、妻と思われる人物とは別の方向へ歩き去った過去の自分と、結局同じ行動をとってしまう。 そんな行動を何回か繰り返しているうちに、過去の行動の修正が出来るようになってくる。 そんな不思議な世界の中で、今の自分と同い年の自分の父親に遭遇する。 この物語に出てくるのは三組の父子関係。 父と子の葛藤、苦悩。お互い”良かれ”と思ってしたことがことごとく裏目に出て、誰が悪いわけでもないのにどうしようもなく離れて行ってしまう関係。 正面切って向かい合うことがなぜか気恥ずかしくて、思ってもいないことを言ってみたり・・・。 そんな甘酸っぱい思い出に浸るのも、たまにはいいかも・・・。 同い年でも自分の父は、越えることの出来ない父であるようだ。 流星ワゴン
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